2024.06.04
アクリル板越しにサーモグラフィカメラを使うと…?意外と知らないシリーズ
こんにちは。常盤産業のブログ担当 田中です。 こちらの画像をご覧ください。 左側の明るい大きなグレーの四角形の中にそれより暗いグレーの小さな四角形、右側の暗い大きなグレーの四角形の中にそれより明るいグレーの小さな四角形が描かれています。この小さな四角形二つ、どちらが暗い色に見えますか? 実は左右の小さな四角形はどちらも同じ色なのですが、周りを囲む大きな四角形の色に引っ張られて左の方が濃いグレーに見えてしまいます。これは「明暗の錯視」とか「明暗の対比」などと呼ばれる目の錯覚です。 目で見て感じている感覚と実際のものが一致しない、見え方が違う、目が勘違いを起こす、なんてなんだか不思議ですね。 実は目に見えるものでもサーモグラフィカメラだと上手く見えない、なんてこともあります。以前アルミホイルを使ってサーモグラフィカメラの実験を行いましたが、本日はその続編として透明なアクリル板を使ったサーモグラフィカメラの実験を行ってみますよ。 赤外線サーモグラフィカメラとは、物体から発せられる赤外線を受光して、そのものの表面温度を測定する測定器で、対象に触れずに表面温度を計測でき、またどこがあたたかいか冷たいか温度分布を計測できるなど、接触式の温度計とは違う便利さを持ちます。 まず、ほかほかのお湯が入った紙コップを用意しました。 この紙コップがどれくらいほかほかなのか、画像ではわからないので接触温度計を当ててみます。 反射でちょっと見えづらいですが、71.7℃となっております。手で持てないことはないですがほかほか、といって差支えない温度ですね。 この状態でサーモグラフィカメラを通して見てみると…… 紙コップ側面は69.6℃。撮影に手間取っている間に少々冷めましたが、接触温度計で測ったのと大きな差はありませんね。 ここで、透明なアクリル板を用意。コロナ禍では飲食店やオフィスなどあらゆるところで見かけたあの板です。空間を仕切りながらも向かいに座った相手の表情はしっかり見える、画期的な設備でしたね。 このアクリル板の向こう側に先ほどのお湯入り紙コップを置いてサーモグラフィカメラで見てみるとどうなるでしょう? こうなります。 サーモグラフィカメラが壊れちゃった!?と思う、真っ青な光景ですが、ご安心ください、壊れておりません。ポイントaが19℃を示しており、その周辺も全て真っ青な為、カメラに写っているほぼ全てが一様に約19℃ということです。 右の写真画像を見るとたしかにアクリル板の向こう側にお湯入り紙コップがあるのですが、サーモグラフィカメラではお湯入り紙コップの温かさを全くキャッチできておりません。 なぜなのか、というと、アクリル板は赤外線を透過しない為です。赤外線の世界ではアクリル板は透明ではなく、向こう側を見通せない壁なのです。私たちが壁の向こう側を透視することができないように、サーモグラフィカメラはアクリル板の向こう側の赤外線を感知できない、ということですね。 これはアクリル板以外にガラスなども同じように赤外線を透過しません。逆にゲルマニウムなどは私たちの目には透明に見えませんが、赤外線は透過します。その為サーモグラフィカメラでゲルマニウムの板の向こう側の温度を見ることができますよ。 サーモグラフィカメラレンズ:サーモグラフィカメラのレンズはゲルマニウムでできています 恒温室の中をアクリルの窓からサーモグラフィカメラで覗きたい、ガラス越しに加工機の中をサーモグラフィカメラで測定したい、という場合は何か工夫が必要ですね。 このように、赤外線の世界は私たちの見ている可視光の世界とは思わぬところに違いがあります。「せっかくサーモグラフィカメラを導入したのに上手く測定できない!」という事態を防ぐ為にも、見たいものが見たい環境でしっかり見られるのか、どうしたら見られるのか、をしっかり確認する必要があります。 弊社では信頼のおける測定結果が出るよう、計測条件や環境整備も含めてご提案しております。 ご相談は下記お問合せボタンより。お待ちしております。